令和5年度農山漁村女性活躍表彰 開催レポート

2024年3月7日(木)、「未来農業DAYs」が東京都港区の女性就業支援センターホールにて開催されました。

このイベントは、農業の未来を担う若手農業者や女性農業者の取組を表彰、支援するとともに、農業に関心のある方々の革新的なアイデアにスポットをあてることで、未来の農業の中心となる若者・女性の取組等を広く社会に発信することを目的としています。

「令和5年度農山漁村女性活躍表彰」受賞者の取組事例紹介や、「第8回大地の力コンペ」のファイナルプレゼンテーションなど、充実した内容で大いに盛り上がりました。

2. 開会挨拶:納口るり子氏

はじめに、未来農業DAYs 実行委員長の納口るり子氏による開会挨拶がありました。

「今回の『大地の力コンペ』ファイナリストの受賞者の多くは、農業高校の方々です。素晴らしい取組をたくさんされていて、私も感銘を受けております。また、『農山漁村女性活躍表彰』で表彰された方々は30代の女性から、私と同年代の方も活躍されています。長丁場になりますが、どうぞ楽しんでいっていただきたいと思います。

3. 基調講演:Wismettacフーズ株式会社 古殿貴大氏

続いて、Wismettacフーズ株式会社 古殿 貴 大氏による基調講演がありました。

古殿 貴 大氏プロフィール

015年 豊通食料株式会社 入社。水産物の輸出入を担当
2018年 国際協力機構の青年海外協力隊として、アフリカのウガンダへ。トマト農家の組合を作り、トマトソースの製造・販売や農家へお米の栽培方法の伝授などを行う。
2021年 株式会社日本農業入社。タイでサツマイモ、イチゴの現地栽培事業に携わる。
2023年 Wismettacフーズ株式会社 入社。 国産果実の輸出、Farmingや輸出ブランドマーケティングを手掛ける。

日本の青果物輸出量は、り んごが最も多いのですが、近年増えているのがサツマイモ。輸出の増加が価格の上昇に寄与している、数少ない例になっています。「農家の高齢化に伴い若い農家さんは『農業で食べていけるのか』ということを気にされるかと思いますが、サツマイモに関しては現状『食べていける』と言えます」と古殿さんは言います。

ただ、サツマイモの輸出も簡単に増えたわけではなく、ブランディング、生産量の確保、品質管理など、様々な課題がありました。

まず、あらゆる産地の農産物が箱詰めされて集まるため、そのまま輸出するとブランドイメージが作れないという問題がありました。海外のお客様 から「元々輸出を想定しているアメリカなどの箱は魅力的に見える」と言われることも多かったそうです。これを受けて、タイの顧客と協力し「Shi-tori」というブランド名を冠した統一されたデザインの段ボール箱を使用することで出荷を行うようになりました。「Shi-tori」は 日本の「しっとり」した焼き芋の人気が高いことから 付けられた名前です。実は、甘くてしっとりした日本の焼き芋のようなものは海外にはあまりないそう。所得の増加や健康志向の高まりにより、子どものおやつ としても需要が高まっているそうです。

ブランドが広まると、そのイメージを維持するため、品質管理の重要性が増していきました。現地のパートナー企業と一緒に、輸送中もサツマイモに適した13〜15℃という温度の維持を徹底するなど、品質管理に努めています。

こうした改善の結果、輸出量 は増えましたが、それに伴い生産量を確保するのが難しくなっていきました。そこで 、「サツマイモのリレー出荷」を行 うことにしました。一つの産地ですべての生産量をまかなうのではなく、北から南までのあらゆる産地でサツマイモを供給してもらう仕組みです。このリレーの中には、北海道も含まれています。サツマイモは寒さに弱いため、関東でも霜が降りる前に収穫するのが大原則。冬が来るのが早い北海道でサツマイモの生産をするのは難しかったのですが、温暖化で 秋口まで気温が高いため、北海道での生産にも力を入れるように。広大な土地がある北海道で生産されるようになったおかげで、さらに生産量が確保できるようになりました。

こうした取り組みのおかげで、「Shi-tori」ブランドの認知は広がり、品質や生産量も確保できるようになってきたそうです。青果物の輸出に関しても、品質や生産量の確保はもちろん、「ブランディング」という視点が非常に重要なことに気付かされる、 学びの多い講演でした。古殿さん、貴重な講演をありがとうございました!

4. 第8回大地の力コンペーファイナルプレゼンテーション

基調講演のあとは、「大地の力コンペ」のファイナリストによるプレゼン動画の上映が行われました。

第8回となる今回のテーマは、「農業✕地域創生」。各方面から幅広いアイデアが集まり、その中から書類審査と二次審査を通過した7チームのファイナリストが選ばれました。事前にファイナリストの皆様にプレゼン動画の撮影をご用意いただき、その動画を視聴した上でグランプリを決定する審査が行われました。

ファイナリストに選ばれたのは以下の方々です。

規格外トマト給与でウマい豚肉生産
渥美農業高校 動物科学部
愛知県立渥美農業高等学校

ミシマサイコの栽培方法の研究
上市高校グリーン分野
富山県立上市高等学校

シイタケ生産量全国4位の秋田県から発信する
「廃菌床x ヘラクレス」堆肥の未知なるパワー
くるくる ミラクル ヘラクレス
秋田県立大曲農業高等学校

糸島の伝統野菜「芥屋かぶ(けやかぶ)」の種を
未来に播き続ける大作戦!
地域イノベーション同好会
福岡県立糸島農業高等学校

放置竹林で未来を変える~厄介者が生み出す可能性~
諫早農業高校 生物工学部
長崎県立諫早農業高等学校

「幌加内そば」で持続した地域未来をつくる
幌加内ソバ循環プロジェクト
トヅキ合同会社 石川 朋佳 氏

学校圃場より発見したナタデココ菌を用いた
高齢者に特化した加工品の開発

更別農業高等学校加工分会A
北海道更別農業高等学校

5. 農山漁村女性活躍表彰 ご挨拶:國井正幸氏

「農山漁村女性活躍表彰」の表彰に先立ち、主催者である農山漁村男女共同参画推進協議会会長、國井正幸氏にご挨拶をいただきました。

「『未来農業DAYs2024』に全国各地から多くの皆さんにご参加いただきありがとうございます。今回「農山漁村女性活躍表彰」を受賞されるのは、厳しい時代変化の中で活動を継続され、女性活躍の促進に大きな成果を出された先進的な方々ばかりです。これら皆様のご功績に深く敬意を表しますとともに、引き続き、今後の進むべき方向性を示して頂ければと思います。女性の能力が一層発揮され、女性が輝き、活躍しやすい社会の建設に向けて共に頑張ってまいりましょう。」

6. 令和5年度農山漁村女性活躍表彰 事例紹介

続いて、「農山漁村女性活躍表彰」の大臣賞の事例紹介の動画上映が行われました。農林水産大臣賞を受賞されたのは以下の方々です。

 

女性地域社会参画部門(個人)群馬県 太田市 清水 由紀江 様

女性地域社会参画部門(組織)栃木 県宇都宮市 とちぎ女性農業委員の会(会長 興野 礼子 様)

女性起業・新規事業開拓部門 三重県 伊賀市 中井 奈緒美様

女性活躍経営体部門 富山県 入善町 株式会社Staygold てらだファーム(代表取締役 寺田 晴美 様)

若手女性チャレンジ部門 群馬県 太田市 中島 沙織 様

 

皆様、おめでとうございます!

事例紹介の動画は「令和5年農山漁村女性活躍表彰」のページよりご覧いただけます。

7. 農山漁村女性活躍表彰 来賓祝辞:農林水産大臣政務官 高橋光男様

続いて、「農山漁村女性活躍表彰」の表彰に先立ち、農林水産大臣政務官の高橋光男様にご祝辞をいただきました。

「本日グランプリが決まる『大地の力コンペ』では、高校生を始めとする皆様から、地域の特産物や未利用資源の利活用等のアイデアについて熱く夢のある発表が行われました。こうしたアイデアが、農業の可能性の拡大につながることを強く期待しています。

新たな基本法の下で持続可能な農業を実現していくためには、まさに今後の農業の未来を支える若者や、女性の皆様お一人おひとりが、柔軟な発想で、農業の新たな可能性に果敢にチャレンジしていただくことが不可欠であると考えています。

農林水産省では、3月10日を『農山漁村女性の日』と定め、官民連携の下、本表彰式をはじめ、様々な形で女性の多様な活躍を広く発信しています。若者や女性の皆様がその能力を存分に発揮し、活躍できるような環境整備に、全力で取り組んでまいります。

本日、受賞の栄誉に輝かれた方々には、今後も創意工夫を凝らした取組をより一層進めていただくことを期待申し上げるとともに、皆様の益々の御発展と御健勝を祈念いたします。」

8. 令和5年度農山漁村女性活躍表彰 表彰式

ご祝辞をいただいたあと、「農山漁村女性活躍表彰」の表彰が行われました。表彰を受けたのは以下の方々です。

 

農林水産大臣賞

女性地域社会参画部門(個人)
群馬県 太田市
清水 由紀江 様

女性地域社会参画部門(組織)
栃木県 宇都宮市
とちぎ女性農業委員の会
(会長 興野 礼子 様)

女性起業・新規事業開拓部門
三重県 伊賀市
中井 奈緒美 様

女性活躍経営体部門
富山県 入善町
株式会社Staygold てらだファーム
(代表取締役 寺田 晴美 様)

若手女性チャレンジ部門
群馬県 太田市
中島 沙織 様

経営局長賞

女性地域社会参画部門(個人)
神奈川県 横須賀市
安田 和子 様

女性地域社会参画部門(組織)
愛媛県 松山市
愛媛県農山漁村生活研究協議会
(会長 小野山 かをり 様)

女性起業・新規事業開拓部門
静岡県 菊川市
早川 ナナ 様

若手女性チャレンジ部門
茨城県 ひたちなか市
澤畑 菜々子 様

地域子育て支援部門
福井県 坂井市
武井 ちひろ 様

林野庁長官賞
  

女性地域社会参画部門 (組織)
宮崎県 美郷町
特定非営利活動法人 郷の息吹
(理事長 小田 ちはる 様)

水産庁長官賞
  

女性地域社会参画部門(個人)
佐賀県 佐賀市
古川 由紀 様

全国農業協同組合中央会長賞

女性地域社会参画部門(個人)
愛知県 碧南市
杉浦 千秋 様

全国森林組合連合会長賞

女性地域社会参画部門(組織)
秋田県 秋田市
秋田県林業女性会議
(代表 齊藤 恵美 様)

全国漁業協同組合連合会長賞

女性地域社会参画部門(組織)
宮城県 南三陸町
南三陸おふくろの味研究会
(会長 小山 れえ子 様)

農山漁村男女共同参画推進協議会長賞

女性地域社会参画部門(個人)
沖縄県 北中城村
安里 千恵子 様

女性地域社会参画部門(組織)
北海道 天塩町
乳製品加工研究会 美留来のゆめ
(会長 中村 美幸 様)

女性起業・新規事業開拓部門
三重県 四日市市
清水 加奈 様

若手女性チャレンジ部門
大分県 国東市
佐藤 朋美 様

審査委員特別賞

女性地域社会参画部門(個人)
福岡県 飯塚市
長野 路代 様

9. 農山漁村女性活躍表彰 講評:岩崎由美子審査委員長

すべての表彰が終わったところで、岩崎由美子審査委員長による講評がありました。

「本日受賞された皆様、おめでとうございます。審査にあたっては審査員6名が審査基準に基づき、厳正な選考を行いました。

特に今年度、選考の過程できちんと見ていきたいことが二つありました。一つは、活動の理念と経営のバランスです。経営の健全性とのバランスがどれだけ図られているかが議論となりました。もう一つは、女性が『生産部門』にどれだけ主体的に関与をしているかという点です。これまでは男性、つまり配偶者が生産を担当し、女性が販売を担当するような役割分担が非常に多かったのですが、そこにとどまらず、女性が経営に主体的に関与していく。そういうところをしっかり見ていきましょうと審査員の中で話し合いました。結果的に、今日受賞された皆様が決定されたということになります。

例えば『家の仕事として』あるいは『嫁が手伝う』といったような昔ながらの農業のイメージではなく、『自分がやりたい農業はこれです』と、主体的に地域の仲間をたくさん作って取り込んでいくという事例がありました。こういう形で『食べていける農業』ができるという事例は、全国で農業を志す若者たちに勇気を与えたのではないかと思います。

今、農山漁村の中で人口が、また若い女性が減っているという課題を抱えています。そのような中で今回、農山漁村だからこそ、女性が自らの力を発揮し、のびのびと自由に、やりたい農業、あるいは地域づくりに関わっていくことができるという発信ができたかと思います。そういった意味でも皆さまの取組は非常に貴重な実践かと思います。ぜひ今後も、それぞれの地域でこういった取組を続けていただければと思います。今回はまことにおめでとうございました。」

10. 大地の力コンペ表彰式

ここからいよいよ、「大地の力コンペ」の結果発表と表彰式へと移ります。各賞の賞金発表時は、会場から大きなどよめきも起こりました!受賞された皆様と、審査員からのコメントをご紹介します。

結果発表

第8回大地の力コンペの結果は次の通りとなりました。

グランプリ
秋田県 くるくる ミラクル ヘラクレス

準グランプリ
北海道 幌加内ソバ循環プロジェクト
愛知県 渥美農業高校 動物科学部

奨励賞
長崎県 諫早農業高校 生物工学部
北海道 更別農業高等学校加工分会A
福岡県 地域イノベーション同好会

特別賞(未来の農業賞)
富山県 上市高校グリーン分野

グランプリ:くるくるミラクルヘラクレス

講評:イオンアグリ創造株式会社 代表取締役社長 福永 庸明 様

「『廃菌床』というのは実は結構あって、『菌床の中に虫がいる』ということ自体はそんなに珍しいことではないんです。でも今回の発表は、菌床で虫を育てながら、その上で野菜を育てるというものでした。つまり、両方生き物なんです。『虫は生き物、野菜は生き物じゃない』というわけではないですよね。それを、高校生のお兄さん、お姉さんたちが、子どもたちに教えてあげることができる、そこがとても良いなと思いました。彼ら彼女らが、これからこの国を担っていくにあたり、とても大切な学びの場になるのではないかと思います。素晴らしい発表を、ありがとうございました。」

準グランプリ:渥美農業高校 動物科学部

講評:一般社団法人 未来農業創造研究会 副代表理事 藤井 滋生 様

「愛知県田原市は全国有数のトマト産地であることから、規格外トマトが多く廃棄されているという問題があります。この規格外のトマトを黒豚の飼料に添加すると、旨味成分が増加するという発表でした。これは本当に素晴らしい報告でした。この発見を、ビジネスに持っていくためには、まだまだたくさんの課題があると思いますが、高校生の皆さんがこうして実験検証をしてくれたわけですから、これをビジネスに変えていくことは、我々社会人、もしくは農業者の努めだろうという風に思います。すばらしい発表をありがとうございました。」

準グランプリ:幌加内ソバ循環プロジェクト

講評:一般社団法人 未来農業創造研究会 代表理事 納口 るり子 様

「こちらのコンペの方は賞金が授与されるということで、額が読み上げられるたびに会場の皆様どよめいて、大変申し訳ないというか、女性活躍表彰の方は、お金では買えないという賞だったなと改めて思ったところでございます(会場笑い)。

若い高校生の方たちの本当に素晴らしい報告の中で、御一方 、社会人の『幌加内ソバ循環プロジェクト』の発表がありました。代表の石川さんの経歴をとても興味深く拝見しました。いくつかの会社で経験を積まれた上で、いよいよご自身の会社をこれからやろうとされています。本当に主体的に、自分の意思をはっきり示して生きる、そういう女性です。こういう女性が出てきているのだと改めて思いました。昨年もそういう方がいらっしゃいましたが、石川さんもまさにその中のお一人だという風に思います。こういう女性が色々な地域で出てくることで、日本全体がすごく変わっていくのではないかということを、さらに期待したいと思います。本当に今日は皆様おめでとうございました。」

奨励賞:地域イノベーション同好会

講評:こと京都株式会社 代表取締役 山田 敏詩 様

「京都にも伝統野菜が38種類あります。でも、そのうち2つがもう消えてしまったんです。実際今流通しているのは、8種類ぐらいです。伝統野菜が続かないという問題には、作りにくいとか、消費がされないとか、利益がでないとか、色々な理由があると思います。でも今日の皆さんのお話を聞いてすごく刺激を受けました。私自身も、京野菜、そして京野菜だけではなく皆さんの地域の伝統野菜というのは、まだまだこれからビジネスになるのではないかと思っています。伝統野菜がもう一度、日の目を浴びる時期に来ているのではないかなと思います。京都や糸島だけではなく、皆さんの地域にも伝統野菜はあると思います。今回の発表を聞いて、この伝統野菜での地域おこしを、是非皆さんと一緒に頑張ってできればと改めて思いました。本当に今日はおめでとうございました。」

奨励賞:諫早農業高校 生物工学部

講評:Wismettacフーズ株式会社 古殿 貴大 氏

「皆さんすごくイノベーションにあふれた発表をされていて、私もすごく勉強になりました。日本の未来は明るいのかなと改めて感じる内容でした。特に私は諫早高校さんの竹林の発表に感銘を受けました。

 以前、半年ほど農家さんで住み込みのアルバイトをしていた時に、農家さんが持っている山で、たけのこを採ってこいと言われて行ったことがあります。たけのこが食べられるからラッキーと思っていたのですが、実際やってみるとたけのこを採るのはかなり大変でした。その時農家さんから、竹林の広がるスピードの早さや、竹の生命力の強さの話を聞きました。それによって起こる放置竹林の問題を、比較的簡単な竹のパウダーという形で有効活用し解決していく、素晴らしいアイデアだと思いました。是非これからも頑張っていただきたいと思います。」

奨励賞:更別農業高等学校加工分会A

講評:株式会社農業総合研究所 代表取締役会長CEO 及川 智正 様

「こういうプレゼン大会の審査員をしている中で見ている点が二つあります。一つはどれだけ熱量を、そしてどれだけ情熱を持って、自分がやっていることをアピールできるかということです。これはとっても大切なことです。もう一つは、それがどれだけ面白いアイデアかということです。どの発表も皆さん全て素晴らしかったのですが、僕は特に、『なんで北海道でナタデココ?』というところが、とても面白いなと思ったんですね。
また全体的に感じたことは、高校生や若い方々がこれだけ農業に情熱を持ってくれているということは、農業の未来はとっても明るいなということです。ありがとうございました。」

特別賞:上市高校グリーン分野

講評:株式会社マイファーム 代表取締役 西辻 一真 様

「私はマイファームの仕事以外に北海道にある札幌静修高校という高校の理事長もやっており、普段から農業教育に関わることも多々あります。その学校にも農業クラブや農業クラスがあり、今日は学生さんたちにも参考にしてもらいたい発表が見られて大変うれしく思いました。
富山というとやはり『薬の街』というイメージがあります。その中で、作物として薬草を選択して研究をするというのは、地域にとっても非常に重要なことだと思います。また伝統野菜もそうですが、地域に元々あるものを栽培をして研究をするというのは、学校教育にとっても大切です。皆様が卒業された後にも、きっと『ミシマサイコ』のことを頭に浮かべながら暮らしていかれると思います。薬草やミシマサイコのうんちくを色々なところで語ることで、きっともっと広がっていくのではないかと思いました。またこの研究に関しては、今後も続けて深掘りした 研究をされていくと、より良いものができるのではないかと思います。そういう意味でも特別賞といたしました。これからも頑張ってください。」

11. 第8回大地の力コンペ 講評 :藤井滋生審査委員長

続いて、全体講評を一般社団法人 未来農業創造研究会 副代表理事の藤井 滋生様にいただきました。

「第8回は『地域の活性』をベースにしていましたが、私は基本的には『シンクグローバル』が非常に重要だと思っています。オランダやアメリカ、ニュージーランド、オーストラリアなど、世界でも地域に根ざした農業が行われています。例えばカリフォルニアであれば大地が広く、水分のコントロールがしやすいといったように、それぞれの地域の特性に合った農業で、さらに力強い農業に変えていくことが重要なのだろうと思います。

今、大谷翔平選手があれだけ活躍されていますが、もっと言えば、何十年か前に最初に日本を出て、壁を打ち破って一歩踏み出した選手がいたわけです。そこには勇気、パッションがあった。それで今や、日本人選手が大リーグで活躍することが当たり前のようになってきている。サッカーでもラグビーでも、世界でプレーして活躍する選手が増えています。農業界でもこのように、世界に打って出られるようなパッションやエネルギーが非常に重要になってくると思います。

第9回、第10回と続けていきたいと思っていますが、どんどんシンクグローバル、そしてアクトローカルというものが重要になってくると思います。みんなを巻き込んでチームを作り、地域で動いていく、リージョンで動いていく。そうしてそこのエリアも含めて活性化していくというのが、農業の基本的な役割だと思っています。

たくさんのご応募と、非常に面白い、エネルギーのあるアイデアをたくさんいただきました。ビジネスの刺激になるような話もたくさんありました。今後とも続けて参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。」

12. 閉会のご挨拶

最後に、納口るり子実行委員長より、閉会の挨拶がありました。

「長丁場でしたがお楽しみいただけましたでしょうか。基調講演では、農業で世界をまたにかけてのご活躍をされているお話を聞き、歳を重ねてからも、わくわくできるようなお話でした。コンペ部門では、皆様に直接お会いできず残念ではありますが、スクリーンの上で素晴らしい発表を見せていただきました。アワード部門では、92歳で特別賞を受賞された長野様もいらっしゃいました。私もまだまだシャンとしなあかん、と、背中を押されるような思いがいたしました。皆様、本日は本当にありがとうございました。」

13. まとめ

参加者の皆様のますますのご活躍により、日本の農業がより一層輝く未来が開けると感じられる一日となりました。受賞された皆様、本当におめでとうございます!